敷地の「外」から考える
建築の場合、設計できるのはあくまで敷地の中だけ。 ですが、同じ敷地でも都会のビルの間なのか、郊外の住宅地なのか、はたまた山の奥深くなのかで敷地の中の状況は全く違ってくるはずです。 視野を広げることで見えてくる建築の姿があります。
楽園町の住宅 の場合
不動産屋さんで土地の図面をもらうと、大抵はこんな感じですよね?
敷地の大きさと、道路の広さ、方位が書いてある程度。
これを元に、どうやって建てようかなあと考えてみるわけです。
・車をどこにおくか?
・ほしい部屋の数は?大きさは?
・リビングは1階かなあ
・お庭もほしいよね。
・○○風にする?
さしあたり、こんなところでしょうか。
ちなみに、この「楽園町の住宅」の敷地は広さ98.35㎡、
建てられる面積は敷地の40%までという制限があり、1フロア39㎡x2階建て=78㎡くらいになります。
クライアントはご家族3人、ひょっとしたらもう一人お子さんが増えるかも、というので
なかなかタイトです。
車を入れて、1階にリビングと水廻りがあって、2階に子供部屋があって、、、と
「常識」通りに建てると、
ぎゅうぎゅう詰めになってしまい狭くて住めたものでは無くなってしまいます。
加えて
もともと「お家の形をしたかわいらしい家」がご希望だったこともあり、
長細かったり、L字型はNG。正方形になるべく近い長方形の平面でなければならず、
それを真ん中に建物を置こうとすると、南側とは1.5m程度しか空きが取れません。
せっかく建てるマイホームが暗くて狭くて窮屈で・・・なんて、
一生に一度(大抵の方はそのはず)の大きなお金をかけて建てるわけですから、悲しすぎますよね。
・・・こんな時は、設計の手がかりは敷地の「外」にあったりするのです。
下の図をご覧ください。
いかがでしょうか。
少し引いてみると、実は道路を挟んで反対側に大学のグラウンドに
沢山の木々がある事に気づきます。
これを活かさない手はありません!
さらに
ここでもう1つパズルの条件を足しますと、
前面道路は日中の車通りが多く人の往来も結構あり、1階に大きな窓があると道路を通る人からの視線と車の音が気になります。
緑を楽しむにも、木々の緑は地上から4~5m高いところにありますよね。
なので、結論としては
東側に木の窓がある、2階リビングの家を設計することにしました。
1階に個室と水廻りをまとめ、天井の高さを低く抑えることで
上り下りしやすいようにし、
屋根の形がそのまま室内を形作ることで
「お家」に住んでいる感覚を存分に味わえるようにしました。
リビングから見えるのは大学の木々だけ。道路を行きかう車も、往来する人々の視線も気にすることなく過ごすことができます。
この窓、住み始めてすぐに お姫様の特等席になったようです。
玄関や水廻りがないので、目一杯リビングダイニングを広くとれました。
建坪11坪と聞くととても小さいですが、22畳のリビング、と聞けばどうでしょう、しっかり広いですよね。
天井の高さを生かして、キッチンの上にはロフトも設けました。
南側には横長の窓。南へ向かって下がっているので、空がとても広く感じます。
もし将来、一つ向こうの土地に家が建ってしまったとしても、2階であれば眺望も採光も遮られてしまう事はありません。
1階には寝室、水廻り、玄関、納戸が入ります。
寝室は一旦仕切りを設けないことで、家族全員が集まって寝られるようにしています。
娘さんの個室が必要になったときを見越して、出入口は2ヵ所設けました。
窓は小さくても、十分光が入ってきます。
先ほど1階の天井を低く、と書きましたが、
寝室なら低さは窮屈ではなく、心地よさにつながります。
また比較的小さな部屋を1階にあるめる事は、構造上もとても有利になります。
雪が降ったよ~ と送っていただいた写真。
夜の灯りが漏れる様子は、絵本の挿絵でも見ているようです。
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さて、ご覧いただきましたように
楽園町の住宅は、一見ごくごくシンプルな建築ですが
敷地の中「だけ」では思い至らない空間になっています。
実は、このように敷地の外の風景を上手に取り込むことを、日本では昔から「借景」と呼び、空間づくりに生かしてきました。
なのに、
現代では大抵のプロでも、敷地の中でどうパズルを解くか、どんなテイストにするか
という事に終始してしまい、暮らしの中でどんな風景を感じながら過ごすのか、という事に目が向いていなかったりします。
(敷地が広大なら、庭だけで風景をつくってしまう事も出来きなくはありませんが・・・)
当たり前ですが敷地は街の一部です。
街の風景をうまく生かし、その一員に加わることで、
小さな敷地を超えた、広がりのある暮らしを楽しむことができるのです。
(追伸)
最後に、もし
この文をお読みいただいているあなたが
家づくりにあたって土地から探しているのでしたら、
是非敷地の「外」をじっくりご覧ください。
見向きもしなかった土地が、思ってもないお宝にみえてくることも、あるかもしれませんよ。
もちろん・・・土地探しからご相談をいただくことも、歓迎いたします。
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