「叶えたい」が中心にある

子育てファミリーだけが「住まい」の住人ではありません。
(もちろん、家の大きな役目のひとつには違いありませんが)

夫婦二人で楽しく暮らしたい、
リタイアを機に人生を楽しむ家に生まれ変わらせたい、

そんな方にこそ
空間のもつチカラを最大限享受してほしい。と考えています。

また、
これは子育て世代の方々も含めお伝えしたいのですが
意外と「家はかくあるべきである」みたいな固定観念がそこかしこに潜んでいます。
自分たちの叶えたい暮らしから空間を考えていくと、
思っても見なかったけど・・・
普通じゃないけど・・・
なんでこんなにしっくりくるんだろう、という暮らしに出会えたりします。
あなただけの暮らし、一緒に設計してみませんか?


熱田の住宅 の場合


熱田の住宅は、ぼくが独立して最初に依頼いただいたご夫婦で、
空間を楽しむことに関しては随一、本当に尊敬するお二人の住まいになります。

敷地は名古屋市の中心部の、比較的密集した市街地。
写真右側がご主人のご実家、新居はもともと駐車場だった場所に建てられました。
敷地は名古屋市の中心部


当初は、ご両親と妹さんの住まわれているご実家を、二世帯住宅に建て替える、というご依頼をいただいたのですが
お話を伺っていくうちに、
築40年以上になるご実家は、お父様が雨漏りから外壁のひび割れから、すべてをお手入れされてきており
まだまだ現役。かつとても愛着と思い入れのある住まいだとわかりました。

愛着と思い入れのある住まい
また
お母様も奥様も料理がとてもお好きで、それぞれの流儀があること。
夜勤もあるご主人とご両親では生活パターンが異なることなどもあり、
通常は二世帯住宅にすべき敷地の大きさではあったものの
駐車場部分に創意工夫で夫婦のための住宅を建て、
別の家だけど一緒に暮らす感覚でいられる「隣居」の考え方はいかがですか?とご提案しました。

***

さて、前説が長くなってしまいましたが、
この提案を「それはいいね!」と受入れてくれたご夫婦の一番のご希望は
「お客さんを招いて自分たちの料理でおもてなしする」家でした。

お二人は美味しいお店をめぐっては、料理の腕を研鑽することを楽しみにしており、
新居ができたら、仕事仲間や友人、隣の両親を招いて夕食会をしたい、
7人くらいは呼びたいなあ、
とお話下さいました。

問題は敷地の大きさ。
なんせ駐車場1.5台分しかありません。
間口は3m、奥行きは9m程度が目一杯、
2階建の総面積で55㎡強。1フロア27㎡程度です。
2階建の総面積で55㎡強。1フロア27㎡程度
27㎡というと、ちょっと大きなワンルームマンションと同じくらい。
一人暮らしをしていた、あるいは今している方は想像してみてください。
部屋に7人呼んで、自分たちを足したらぎゅうぎゅう詰めですよね。

それと、ご希望である
料理が並ぶテーブルも、大人数が一緒に囲むとなれば
それ相応の大きさが必要です
そんなに大きなテーブルをどんと置いてしまえば、
普段の生活が窮屈になってしまう・・・





こんな課題に、ご夫婦と一緒に考えた末にたどり着いたのは、こんなアイディアでした。

大きなテーブル 大きなテーブル
とっても大きなテーブルを、角をまるめて、片側によせる

奥行き1.1m、巾3.6m、言うなればちゃぶ台のおばけ(笑)です。

タタミ2枚分もあるこの大きなテーブル タタミ2枚分もあるこの大きなテーブル
タタミ2枚分もあるこの大きなテーブルですが、
片側に寄っているので、普段は夫婦がそれぞれ好きな事をしていられる作業台にもなりますし、
角は丸いテーブルみたいなものですから、2人で食卓を囲む事もできます。
そして
大勢の人を招いた時も「みんなで1つの料理を楽しむ」ひとときを作ることができ
もちろん料理をサーブする動線もキチンと確保できます。

茶の間 茶の間 茶の間
ともすれば邪魔者になってしまいそうな大テーブルが、かつての「茶の間」のように
様々な行為を受け入れてくれる、おおらかな空間をつくりだしてくれました。

10人で集まっています。 10人で集まっています。 ワンルームマンションにこの人数が入ったら・・・と思えば、ゆとりすら感じます。

ワンルーム空間に変化 ワンルーム空間に変化
このテーブルの周りには
畳の子上がりや
キッチンの作業台を兼ねたロフトがあり
ワンルーム空間に変化を与えてくれています。
キッチンはオールステンレスの業務用。小さくてもガチンコです。

日々、 ご夫婦はここで別々の事をしたり
一緒に料理の仕込みをしたり、
時には二人だけで乾杯!などなど、
暮らしを本当に楽しんでいただいています。


割烹料理店のよう 日が暮れてくると割烹料理店のよう・・・

実際にごちそうになったお料理です。
ごちそうになったお料理 ごちそうになったお料理 ごちそうになったお料理
完成して5年が経ちますが、
ほぼ月1~2のペースでお食事会は開催されているそうです。
ぼくも何度もごちそうになりました。


***


いかがでしょうか。
そもそもが住宅としてとても小さい故に、
「普通の家」にはなりえなかったという事情もありますが、
叶えたい暮らしから考えていくことで、
最初は想像もしなかった、
他の人がどう感じるかは分からない、
でも、
何だか妙にしっくりくる・・・そんな空間に出会うことができるのです。


「いやあ夏樹君、人生変わったよ!」

そうご主人に言っていただいた夜、
お二人が人生を楽しむうえで、
空間がそれをしっかりサポートできていることに、設計する人間としてこれ以上ない喜びを感じました。





・・・そうそう、
人生が変わったといえば、
建築にのめり込んで、趣味は建築。休みの日も建築雑誌をみて建物を見に行って・・・
結婚なんて考えもしない人生なんだろうなあ、くらいに思っていたぼくが、
ここで初めて出会った女性と結婚して
今は二人で暮らしています。

建築で人生が変わる、事をこの家は僕にもしっかり体感させくれました 笑


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