スペインの建築家アンサンブルスタジオによる講演会「Architecture of The Earth」のアーカイブ動画をギャラリー・間の方に教えていただきました。
今年の9月まで開催されていた(のですが見に行けなかった)展覧会に伴うレクチャー。
会場写真をみると石のようなモルタルの塊模型がたくさん並べられていて・・・日本の建築のスタディとはずいぶん違う印象ですが、
この動画でも同じような差異性を感じました。

https://jp.toto.com/gallerma/ex210608/sympsm.htm

彼らのプロジェクトの多くは、
コンクリートを媒介に自然を建築へと転写した、フロッタージュのようなつくられ方をしています。
大地(地球)とのつながりを求める手段として、
自然素材そのものを用いる(素材の味そのまま、的な)アプローチではない辺りが、
日本人的感性と違っていて興味深い。

地球を相手にする、というと僕には三分一博志さんが思い浮かびますが、
三分一さんは「動く素材」として風や水、太陽といった、直接的な建築の構成要素ではない所で地球との関係を持とうとしていたのに対して、
アンサンブルスタジオはより物質的につながりを求めてコンクリートを使用しています。
https://jp.toto.com/gallerma/ex160415/index.htm
これもヨーロッパ的なのかな。
※ヨーロッパ的というのも乱暴なくくりですが、ひとまず分かりやすいので。

あるいは空間を作る手法を見ていても、
結構、国立公園的な場所にがつっと穴を掘ったり、洞窟をくりぬいてトップライトを設ける辺り、
それやっちゃう?と日本人的には思ってしまうくらい、
自らアクティブに関係を獲得しに行っているようで、
どちらかというと「授かる」「受け入れる」ように「動く素材」を取り込む三分一さんとも対比的。
というか、そうか三分一さんは日本的な地球へのアプローチだったんだなと、
この動画をみて思いました。。

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そして、
講演会ムービーをみて「日本人の感覚と全然違うアプローチだな~」と思っていた所に、
同じくアーカイブされている藤本壮介さんとの対談が、
ヨーロッパ的/日本的な違いの理解を補完してくれています。

https://jp.toto.com/gallerma/ex210608/talk.htm

一見自分自身とは関係のない(真似できそうもない)世界からも
類似性・差異性を見ることで得られる建築のエッセンス、
あるいは違う文化から得られる気づきなど、
『すぐに役立つアイデア100!』みたいな即効性ある訳ではないけど、
だからこそもっと大事なヒントを教えてくれているように思いました。

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すごく長くなってしまいましたが
最後に一番勇気づけられたというか、面白かったお話を。

ギャラリー・間の方に教えてもらったのですが、
アンサンブルスタジオは最初からこの手法を狙って考えたのではなく、
スペイン著作協会本部(ムービーの最初のプロジェクト)の時に、
石の端材を使いたいが職人は動いてくれず、仕方なく自分たちの手で試行錯誤をし始めたのがきっかけだった、との事。

とにかく面白い事を!と探し求めるのではなく、
今ある仕事にどうきっかけを見出せるか、という事なんだなと思いました。
いきなり大地まで見渡せるかは分かりませんが、
少しずつでも建築を見る視野を広くしていきたいと思います。

ムービーは2022年9月30日(金)まで公開されているそうです。
展覧会見たかったなあ・・・